グリーンパル・カフェ Vol.15 report 
日時:2006年12月5日(火) 19:00〜21:00
講師:蜂須賀公之氏(NPO birth理事・パークレンジャー部長)
題目:「スウェーデン 自然と共生する人々」

◆講演内容報告
今回の講師は、NPO birthの理事でパークレンジャー部長の蜂須賀公之さん。エコライフとアウトドアの先進国といわれる北欧スウェーデンを視察された蜂須賀さんより、今、日本人が何をすればよいか、100年後のために何をすればよいか、スウェーデンの人々の自然との共生生活から得たヒントをもとに、説明していただいた。
◆スウェーデンの地理
スウェーデンは、ユーラシア大陸の西北端、バルカン半島の南に位置する。面積は日本に1.2倍で449.964u、人口は東京都より少ない900万人である。首都のストックホルムは、北緯60度で、日本の最北端よりも3000qも北にあるが、メキシコ湾暖流の影響で世界中の同緯度の場所より例外的に暖かく、南部では農業が盛んである。また国土の3分の2を占める北部には、100万人足らずしか生活しておらず、「ヨーロッパ最後の原野」と呼ばれている。
◆スウェーデンの社会・国民
スウェーデンでは、高い税金(消費税25%、実質税率60%)により、公共機関が充実している。また、政治・財政の透明性が徹底され、投票率は86%である。国民は、堅実・実直で、古いもの・昔ながらの生活を大切にしている。そして、冬が長いため、夏の長期休暇にたっぷりと太陽を浴びることが、基本的人権のようになっている。さらに、有給休暇は5週間、消化率は100%としっかりした休暇も取っている。
スウェーデンは、世界の工業国の中で唯一180年間戦争をしていない国であるため、戦争をせずに温存してきた資本やマンパワーを活用し、世界の工業国に発展した。経済のピークは1960年代であって。また、スウェーデンの高齢化率のピークは、2010年の21%であるが、それは85年もの歳月を経て徐々に進んできたものである。それに比べ、日本は、スウェーデンの3倍もの速さで一気に高齢化が進んでいる。
つまり、スウェーデンは、戦争がなかったために、工場が破壊されたり、人手が減ることはなかった。また、税金が高いので、国民の政治への意識も高い。そのため、福祉・環境への政策が正しく、堅実に進んできたと言える。
◆スウェーデンのサマーハウス
多くのスウェーデン人は、サマーハウスと呼ばれる別荘を持っている。別荘といっても共同井戸や風呂は湖水浴というような簡素な家も多い。また、サマーハウスを持っていない人はヨット、キャンピングカーなどを持ち、学生は自転車でキャンプ場に行くなど、それぞれに休暇を楽しんでいる。
◆サマーハウスでの暮らし
農科大学に勤めるヨーラン・トールさんのサマーハウスは、ストックホルムの郊外の湖沿いにある。50年前、彼の父親が手づくりしたというこの家には、50歳のプルーンの木があり、50年使った鍋が現役で使用され、50年を経た木の壁が美しく日に焼けていた。真夜中、トールさんと手漕ぎボートで湖へ出て、魚を捕る網を張りに行った。その時、真っ暗な湖の上でヘッドライトを点けると、彼はしわがれた低い声で、まるで森の精霊のようにこう言った。「ライトはいらない。星の光で見える。僕はこの自然に包まれるのが、何より好きだ」。スウェーデンの人は、ローソクの火と暖炉の明かりをこよなく愛している。電気の光は仕事の光なのだといい、首都ストックホルムにも、派手なネオン等はほとんどない。
◆身近な大自然
スウェーデンでは、都心から40分の所に大自然がある。子供もキノコを探すのが得意で、採ったキノコは、スライスして乾燥させ一年中の食料になる。また、森の中のキノコは誰が取っても良く、王様の土地に入って採ることも認められている。これは、200年前の法律が今も使われているもので、「スウェーデンの自然はみんなのもの、自由に、しかし他の人のことを思いやって利用する」というルールが守られている。このように、ごく当たり前に自然を愛し、自然と共有しているのである。
◆エコビレッジ
「エコビレッジ」とは、具体的な定義が決まっているわけではなく、取り組み方はそれぞれ違うそうだが、共通していることは「環境に配慮し、持続可能な自然共生型社会を目指す」ということである。現代の知恵を生かしながら自然と共に暮らすコミュニティーといえるかもしれない。この日はスウェーデンの2つのエコビレッジが紹介された。
◆イッテルヤルナ
1861年、オーストリアに生まれたルドルフ・シャタイナーは、自然との共生を志向し、本来の成長に合わせた、人間教育を提唱した。そのシュタイナー教育の広大な実践施設がストックホルムから車で40分の地方都市イッテルヤルナにある。ここには、幼稚園から大学までという学校はもちろん、広大な農園、牧場、病院や大ホールまである。ここの家畜は高校生が育てていて、牛一頭あたりに対し世話をする人を増やし、牛が幸福であるように飼育している。このことによりミルクが甘くて清らかになるそうだ。また、施設内の汚水は7つの池で生分解され、ストックホルムの汚水処理場よりきれいにして海に流している。この池は、それぞれ違う植物が勝手に育ち、菌と植物の力のみで浄化している。
◆ウンデルステンヘイデン
ウンデルステンヘイデンは、首都ストックホルムの中心部から、地下鉄でわずか10分のところにあり、世界初の首都内エコビレッジである。森の中には、買うより作ること楽しんで手作りされた、ツリーハウスや木馬、船の遊具などがある。住宅は2階建て、4棟並びでできていて昔の日本の長屋のような造りである。このため、すぐ横には隣人が住んでいるが、視界には入らないほど、多くの森の木々が広がっている。ここには、森の別荘の開放感と下町長屋の温かみの両方があるのである。また、日本の公民館から発想を得たというホールでは月に1回ミーティングが行われる。共同所有の車4台は、一世帯あたり月2000円程度で利用することもできる。さらに、リサイクルステーションもあり、不要な品は、そこに1年間保管し、必要な人がピックアップできるという仕組みがとられている。
◆最後に
スウェーデンと日本は人口密度も自然の大きさも異なる。しかし、我が国は戦争の恐ろしさ、みじめさの危機感であおり、インスタントの住宅や食品等をたくさん作り、これまで生きてきた。私達は50年前の生活を、もはや実感としてイメージすることはできない。一方、スウェーデンの人は、古い=大事と考え、50年前の家や鍋を今なお使い続け、環境と共生して生きてきた。彼らは今やっていることが50年後、どのようになるかというイメージを持っていて、環境のためにしていることや、昔の生活を守ってきたという行動に対し、重さや深さ、自信が感じられる。私達日本人も、かつては自然と共生し生活してきた。それをもう一度見直し、50年、100年かけて、少しずつ「自然とともに生きてゆける暮らし」を作り上げていかなければならない。消費主導、若者文化主導ではなく、大人の知恵と経験がもっと尊敬される、堂々とした国にしていかなければならない。
◆感想
スウェーデンの人々の自然との共生生活を知り、日本もそんな社会に変えていかなければならないと強く感じました。インスタント食品等、安いものを早く提供するという価値観を続けていては、自然と共生することはできないだろうし、50年後、100年後の未来をイメージすることもできないと思います。スウェーデンの環境への取り組みは、長い時間をかけ、無理なく自然に生み出されてきたもので、そのまま日本で実現することはできないけれども、私達の意識の変化により実行できることはたくさんあると感じました。蜂須賀さんのおおらかな人柄と美しい写真を見ながら、話を聞いているうちに、「スウェーデンに行ってみたいな」と、そんな風に思えるカフェでした。
文責:NPO birthインターン 江森裕美子

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