グリーンパル・カフェ Vol.9 質疑応答 
「自然の力を借りて、傷ついた子ども達の心の扉を開く」
〜アメリカ・ニューヨーク州の治療施設 グリーン・チムニーズの試み〜 (報告:三ヶ原靖典)
質疑応答
Q1.
施設を出た後の子どもたちはどんな道をあゆんでいるのか?
A1.
グリーン・チムニーズにいる期間はたった2年間ほど。その後どうなるかは人それぞれ。グリーン・チムニーズでは、「私たちは子どもたちを直すことはできない。ただただ社会の中でやっていけるようにする筋道を作るのが役目。」と、最初から限界を受け入れて活動している。それでも、場合によっては子どもたちの出所後のケアを続ける必要があったため、ニューヨーク州やコネチカット州などにグループホームを作り、運営している。家庭に帰れる子はそれでいい。しかし、家庭に帰ってもうまくいかない子や、もともと親がいない子もいる。色々なケースがあり、そのような子どもたちの受け皿が必要になった。グリーン・チムニーズは、ニューヨーク市にもアフターケアを担う部門を持っている。しかし、子どもたちが成人するまでは追跡することはできない。結局、その子どもが何十年かの人生をどのくらい幸せに生きるかまでは手に負えないのが現実。それもあって効果は測っていないのだと思う。
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Q2.
継続的な活動のためには、人とお金は大事。人材の確保、待遇面はどのようになっているのか。また、資金源はどうなっているのか?
A2.
設立当初は私立の学校だったので援助はなかった。社会福祉施設になってからは、行政がお金を出している。しかし、全てのプログラムにお金を出しているわけではない。必要最低限の資金だけ。例えば、介助犬育成プログラムには資金が出ていない。その分の経費は、自費でまかなっている。
こうした事情から資金集め専門機関である、「フレンズ・オブ・グリーン・チムニーズ」という組織をつくった。この組織は、グリーン・チムニーズに関わりのある政治家や有名人などを動かし資金集めをしている。資金集めは、募金活動のほか、ダンス・パーティーやイベントを催してもいる。また、直営店で販売をしたり、ボランティアが施設の羊の毛で作ったバッグ、敷地内にあるカエデの木から作ったオーガニックのメイプルシロップ、さらに蜂蜜などを生産・販売している。
スタッフ確保は常に大変そう。それでも経験が蓄積されたコアのスタッフが何十年も動いていないのはすごい。一般の寮で実際に子どもたちの面倒を見るスタッフは流動的。十分な待遇はできないようだ。そのため、スタッフは、自分に子どもができるなど経済的な事情が生じると、より高い給料をもとめて移らざるを得ないこともある。農場スタッフは、世界中からインターンが集まってくる。カールトンが心を開いた獣医師もスペイン人である。そういった人たちは、インターンとしてきて、離れられなくなり、スタッフになる。いわば、インターン制度によって人材を育成しているといえよう。
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Q3.
アニマルセラピーに比べ、園芸療法は設備投資が少なくてすむ。園芸治療を広めればより多くの人が、治療サービスを受けられるのではないか?
A3.
グリーン・チムニーズは園芸も広くやっている。カリキュラムには園芸が組み込まれており、すべての子どもがそこに入っていく。スクールガーデンというクラスごとの畑があり、気軽に農体験できる。また、施設のいたるところに庭があり、その庭の手入れにも子どもたちがかかわっている。また、オーガニック生産の畑で育てた収穫物をCSA(コミュニティ・サポーティッド・アグリカルチャー)のメンバーが購入し、売り上げを資金にするというシステムもできていて、より園芸・農業に興味のある子は、その畑で働くこともできる。このように、アニマルセラピーの影で園芸療法も幅広く行われており、そっちのほうが合うという子もいる。どの子が何を選ぶかという、”その子に選択肢があること”、それがいい。必ずしも動物と組み合わせずとも、園芸だけで始められる所は始めたらいいし、動物でもいけるなら動物もやればいい。馬など大型動物は大変だが、犬などの手軽で身近な中型犬からでもよい。要は、始める人のキャパや資金規模などによって、いろんな手段があると思う。
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Q4.
総合教育と精神医療の24時間体制予防医療。これらをどんな形で運用しているのか?また、日本での導入は可能か?
A4.
総合教育という点で言うと、学校のカリキュラム自体がまさにそれ。学習障害を抱える子が多いため、普通の授業では効果が上がらない。そこで木工工作やアートの授業を増やすなどの工夫をしている。そのため一つのクラスでも各人プログラムが異なる。
グリーン・チムニーズでは、がちがちのカリキュラムを作るより、収穫物の販売で計算の勉強をさせるなど、生活のすべてを学びの機会ととらえている。子どもたちは、基本的な生活スキルも学んでいく。グリーン・チムニーズの実践をみていると、常に総合教育の視点を持ちながらやっているという印象がある。
精神医療という点では、アメリカは日本より薬を使うので、投薬を受けている子も多い。ADHDやうつの傾向が強い子も多く、抗うつ剤を飲む子もかなり沢山いる。そのため常に精神科医がきちんとみて、薬の量などをはかっている。治療チームは精神科医・ソーシャルワーカー・教師・寮のスタッフでだいたい5人位のチーム。そのチームが一人の子をみる。
チームは週に一回、ミーティングを行う。また、月一で総務なども巻き込み、精神科医も出席しての会議が行われている。これらの会議で子どもたちの状況が報告され、治療方針などが検討される。
24時間誰かが観察し、助けも得られるという点で、24時間体制といえる。子どもたちは寮におり、寮のスタッフは夜も一緒に寝泊りしている。また、キャンパス内のクリニックには、ナースも待機している。子どもたちに何かあれば、スタッフがすぐに駆け込むこともできる。
日本でできるかという点は、いきなり日本でできるかといえばそれは難しい。最初から大きな目標を考えるより、できるところから少しずつやるほうがよいと思う。実際に見た印象で言うと、あまり大きなものは作らずに、精神医療の専門家が顧問としてつき、普段から心のケアに携わってきた現場の人と、動物や園芸の実際の部分を担える人たちが連携できるという仕組みがあればできるのではないか。ただし、最初からあまりに困難なケースは扱わないほうがよい。いままでいろんな更生プログラムを取材してきた中で、誰もが成功した理由として挙げるのは、「まず一番成功しやすいことから始めた」ということだ。一番大事だからこれをやりましょう、というのは、一見正しいように思えて実はそうではないこともある。成功が見込めそうなところから始め、徐々にそれを積んでいく方がよいと思う。
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Q5.
ボランティアで、自閉症の子に月一回程度アニマルセラピーをやっている。しかし、いつも何か足りないと感じている。アメリカでも小さな団体があると思うが、どのように運営しているのか。日本との違い、日本にたりないものはなにか?
A5.
やはり回数は大事。私も日本でボランティアをしたことがあるが、月一回だともの足りない。月一回のふれあいは、そのときは楽しいが、なかなか継続にはならない。訪問活動するより、その施設なりに犬がいて毎日接しているほうがよい。アメリカでも小型版グリーン・チムニーズのようなものをやっているところはある。しかし、施設に動物がいるのではなく子ども達が週1、2回、農場に出向く。それを9週間という単位でやり、継続したい子はさらに9週間延長する。そのくらいの頻度と時間をかけると手ごたえに違いがあるのではないか。

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